想いの音量

ある晴れた日の午後、幸村は大好物の団子を頬張りながらも何故か浮かない顔をしていた。屋敷の縁側にごろんと寝転がって外の景色を見つめる。
「はぁー…」
訳もなくため息をつきながら寝返りを打つと そこには見慣れたいつもの佐助の姿が有った。
「ちょっとー旦那、昼間っから何してんの?」
「ッ!?」
今日は奥州へ偵察の任務に就いていたはずではなかろうか。驚いて佐助の顔を見つめると 彼はニッコリ笑って縁側のふちに腰掛けた。
「思ってたよりも早く仕事が終わったんだよねー。何か色々噂が立ってたみたいだけど、結局伊達軍に目立った動きは無かったし。全く竜の旦那も人騒がせなんだからー」
そう言いながら彼は器に盛られた団子をゆっくりと口に運んでいく。
こうしているといつも、自分たちが主従関係にある事を忘れてしまいそうだ、と幸村は思う。
まったりと二人で団子を食べているこの一時、この一瞬だけが続けば良いのに。
そうしたら…そうすれば、佐助は主としての自分だけではなく、真田幸村という一人の人間を見てくれるのだろうか。
そこまで考えてふと佐助の顔を見ると、彼は人当たりの良い笑顔で、
「どしたの旦那?」
と、いつもの調子で話しかけて来た。けれど、今はその問いに答える気にもなれないし、それ以前にお前が好きでしょうがないんだ、なんて答を大声で言える筈も無い。
だから今度は彼に聞こえないように小さなため息をついた。
「こんなにも好きだというのに・・・」
そして佐助に聞こえないように小さく呟くと、途端にこの思いを伝えられないもどかしさが全身を駆け巡る。
自分は確かに佐助の事を好いているが、佐助はきっと自分の事など主としてしか見てはいないだろう。佐助の事だからそれ以上でもそれ以下でも無いに違いない。
そう勝手に決めつけて一人沈んでいると、佐助が珍しく音を立てて立ち上がった。何だろう、と思い振り向くともの凄く近い場所に彼の顔が有って思わず目を見開いた。
「ッ佐助!?」
「ちょっと、ホントにどうしたの?旦那らしくもない事しちゃってさ。」
「別に、何も・・・」
緊張して、上手く言葉が出てこない。こんなにも佐助が近づいてきたのは初めてだ。佐助の質問も耳に入らず、ひたすら彼の整った顔を見つめていた。
「・・・もーこの人は一体何なんだろうね・・・。分かった、俺は部屋に戻るから何か有ったら呼んでね?」
そう言って彼は音も、そして微塵の迷いすら無く、素早く歩き出した。
「佐助、待っ・・・」
焦って立ち上がると、佐助はその音に気づいたのか今度はゆっくりとした動作で振り向いた。そして困ったような笑みを浮かべて、
「・・・俺も、好きだよ・・・幸村様」
「っ!?」
佐助は事もなげにそう言ってまた歩き出す。
しかし今度はいつもの音を立てない歩き方では無く、彼にしては珍しくスタスタと音を立てて歩いているのが分かった。
それにふと気づき、唖然としながらも小さく笑う。
「・・・何だ、お前も同じ気持ちだったのか」
そう呟いてから、幸村は今頃彼自身の発した言葉を思い出して頬を赤く染めているであろう恋人の元へと勢い良く駆け出した。
 

…佐幸佐?(何
最初は佐助が攻めていても、最終的に幸村が主導権を握る。そんな真田主従が大好きです(偏った愛・全開
ちなみに、佐助が好きって突然言い出したのは幸村が好きって言っていたのが聞こえたからです。
忍のやることさ、なんでもアリだろ?←←←←←
…あとがきで説明しなくても分かる小説が書きたいorz
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