彼流虐待

「佐助」
就寝前、特に用があるわけでも無いのに気がついたらその名前を呼んでしまっていた。
幸村が最も信頼を寄せ、最も心を許す存在である佐助は、昔から兄のように自分に接してくれる大切な部下であり、仲間であり、そして恋人である。
それに加えて忍である彼は、音も立てずに幸村の元へと舞い降りた。
「何ー?俺様もう寝る所だったんだけど」
そういって彼はふてくされた様な表情を浮かべたのだが、幸村が楽しそうにこちらを見ているのに気付き、その表情はすぐに困った様な笑みに変わった。
「あぁ、すまん。別にこれといった用は無いのだが、つい名前を呼んでしまったのだ」
「…ちょっと旦那ー、そういうのやめてよね!こっちが心配になってくるでしょ!大体いっつもそんな事しないクセに、変な旦那!!」
変な旦那。そんな事は幸村自身が一番良く分かっている。それでも、たとえ少しの時間であっても、今は佐助の姿を見ていたいと思ったのだ。それ程に幸村は佐助の事を想っていた。
…少しでも、一緒にいたい。
…少しだけ、虐めてみようか。
「すまぬ。でも何だか先ほどは無性に佐助の顔を見たくなって呼んでしまったのだ。もう部屋に戻って良いぞ」
本当はもっと一緒に居たいのだけれど、わざとそう言って幸村はごそごそと布団の中にもぐりこんだ。
「…ちょっと、本当に寝ちゃう訳!?人の事呼び出しておいてソレは無いでしょうが!」
次の瞬間、勢い良く布団がめくりあげられた。少し唖然としたけれど、佐助にもこんなにムキになることがあるのか、と思うと思わず笑ってしまった。
「…ふふ…っ」
「…もー本当に今日はどしたの?何か変な物でも食べた??」
口ではこんな事を言いながらも心配そうにこちらを覗きこんでくるこの忍があまりにもかわいらしくて、もう虐めるのは終わりにしようと決めて幸村は勢いをつけて起き上がり顔をグッと近づける。
「え…旦那?」
戸惑う佐助の顔もまた可愛らしい。そう思いながら幸村は佐助の華奢な体を強く、強く抱きしめた。
「佐助…好きだ」
ゆっくりと、そして穏やかに笑みを浮かべて告げると、佐助は少しだけ頬を赤く染めて俯き、
「…俺も好きだよ、旦那」
そう小さく呟いた。
「佐助、俺はきっと今、その言葉が欲しかったのだ」
自分で確認するように言うと佐助はまた困った様な笑みを浮かべ、それから赤く染まった顔を隠すように幸村の胸に顔をうずめた。

そして暫くの沈黙の後、佐助はその状態のままで言葉を紡いだ。
「そんなの、いくらでも言ってあげるのに」
「それなら、もう一度言ってくれないか?ただし、ちゃんと俺の目を見て…な。」
そう言うと、佐助は少しずつ幸村の瞳へと焦点を合わせる。
照れた様に一度笑い、もう一度幸村の瞳をしっかりと見つめ、そして言った。


「…貴方の事が好きです、幸村様」
 

ちょっと短くなってしまった…
ただオトメな佐助が描きたかったのです!←
管理人の脳内で佐助はもはやオトメン

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